受験がつらくてやめたいときの対処法|「やめたい3類型」と壁を越える条件

「模試の判定を見た夜、机に向かおうとしたら涙が止まらなくなった」「朝、塾に行く支度をしようとして玄関で動けなくなった」――こうした声は、受験生本人からも、お子さんを心配する保護者からも数えきれないほど寄せられます。結果以前に「続けること自体が難しくなる時期」は、ほぼすべての受験生に一度は訪れます。

この記事では「やめたい=甘え」と切り捨てもせず、「やめたい=休めばいい」と単純化もしません。約8年・延べ500名超の受験生を見てきた指導現場の知見と公的データから、「やめたい」を燃え尽き型・自信喪失型・動機喪失型の3類型に分解し、それぞれの回復経路を整理します。

つらさには種類があり、種類ごとに効く対処が違います。ひとくくりに「頑張れ」「休め」と処方しても効きません。今日から動ける地図として読んでください。

受験がつらくてやめたい気持ちは、燃え尽き・自信喪失・動機喪失の3類型で対処法が変わります。類型別の手順と回復期間の目安、厚労省サインでの3段階判別、公的相談窓口までを整理します。

この記事でわかること

  • 「やめたい3類型」(燃え尽き型・自信喪失型・動機喪失型)の見分け方
  • 各類型ごとの対処手順と、回復までの所要期間の目安
  • 厚労省「こころのSOSサイン」4面で軽症・中等症・重症を判別する3段階基準表
  • 「やめたい」を口にする時期別(夏・秋・冬・直前期・浪人生)の対処方針の違い
  • 家庭→予備校→公的窓口→医療機関の4階層相談フローと各層の使い分け
  • 文部科学省「24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310」など使える公的相談窓口の一覧
  • 保護者向け:子どもが「やめたい」と言ってきたときの初動とNG反応3つ

公的情報源: 厚生労働省「こころのSOSサインに気づく」/文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」/大学入試センター/JASSO 学生生活調査

目次

「受験をやめたい」3類型

「受験をやめたい」と訴える人に最初に問うべきは「何がつらい?」ではなく、「いつから、どんなふうにつらい?」です。これを聞き分けると、ほぼ全てのケースが次の3類型のどれかに当てはまります。原因が違えば、効く対処も回復期間も変わります。

  1. 燃え尽き型(学習量過多・休息不足)
  2. 自信喪失型(模試判定の累積・成績の伸び鈍化)
  3. 動機喪失型(志望校・進路への確信の喪失)

類型1. 燃え尽き型(学習量過多・休息不足)

最も多いのがこの型です。本質は「身体が限界に達して、心が後から追いついた」状態。やる気の問題ではなく、生理学的な過負荷反応です。

  • 1日10時間以上を3週間以上連続で続けている
  • 睡眠時間が6時間を切る日が週3日以上
  • 食事を「機械的に流し込む」感覚になっている
  • 模試直後・大型講習直後に発症しやすい
  • 「ペンを握ると吐き気がする」「教科書を開けない」など身体反応が出る

燃え尽き型は、3日〜1週間の意図的な休養で回復に向かうケースが大半です。むしろ「やめたい」と感じた時点で休んだほうが、その後の伸びは大きくなります。休むことは後退ではなく、回復の最短ルート。回復の目安と手順は後述します。

類型2. 自信喪失型(模試判定の累積・成績の伸び鈍化)

次に多いのが自信喪失型です。本質は「目標と現状のギャップに圧倒されている」状態。届くかもしれない目標が、もう届かないと感じられてしまいます。

  • 模試判定がD・E判定で2回以上連続
  • 成績の伸びが3ヶ月以上止まっている感覚がある
  • 「自分には才能がない」「受かるレベルじゃない」が口癖になる
  • 友人・SNSでの他人の成績比較で動揺が大きい
  • 過去問を解くたびに「やっぱり無理」と落ち込む

自信喪失型は、「学習方法の再設計」と「目標の再分解」で回復に向かうケースが多い型です。燃え尽き型と違って「休んでも戻らない」ことが多く、休養ではなく学習戦略のリセットが効きます。

類型3. 動機喪失型(志望校・進路への確信の喪失)

最も対処が難しいのが動機喪失型です。本質は「目的そのものへの問い直し」。病的な反応ではなく、むしろ知的成熟の一過程として現れることがあります。

  • 「この大学に行きたいのか分からなくなった」が口癖になる
  • 「なぜ大学に行く必要があるのか」と根本を問い始める
  • 勧められた進路に違和感を持ち始める
  • 興味の対象が受験以外(プログラミング・芸術・起業など)に向く
  • 過去問を解いていても「これを学んで何になる」と感じる

動機喪失型には「頑張れ」「やる気を出せ」が効きません。学習を一時停止して「進路の棚卸し」をするほうが結果的に近道になります。詳細は後述します。

「やめたい」が混合型のケースも多い

実際には1類型単独ではなく、複数の類型が混合していることが多くあります。たとえば次のような組み合わせです。

混合パターン起きていること
燃え尽き+自信喪失過労で成績が下がり、自信を失う
自信喪失+動機喪失成績が伸びず、志望校への確信も揺らぐ
燃え尽き+動機喪失疲労の中で「これは自分のやりたいことか」と問い直す

混合型の場合、最優先は燃え尽きの解消です。身体が休まらないと、自信喪失も動機喪失も冷静に判断できません。順序は「身体→学習方法→進路」。このレイヤーで戻すのが、再現性の高い回復パターンです。

厚労省「こころのSOSサイン」4面で見る3段階基準

「やめたい」と感じた段階で次にすべきは、「自分の現状はどの程度か」を客観的に把握することです。手がかりになるのが、厚生労働省「こころのSOSサイン」4面(睡眠・食欲・体調・行動)です。この4面の出現数で軽症・中等症・重症を判別できます。

厚生労働省は「子どものこころのSOSは『睡眠・食欲・体調・行動』の4つの面に出やすい」と公表し、「今まではこんなことがなかった」「どうも普段の様子と違う」など、いつもと違うことへの気づきが大切だとしています(厚生労働省「こころもメンテしよう こころのSOSサインに気づく」 2026年6月閲覧)。

4面のチェック項目

各面で「いつもと違う変化」が2週間以上続いているかをチェックします。本人へのヒアリングも、この4面の言葉で整理すると把握しやすくなります。

睡眠面
  • 寝つきが悪い(30分以上)/夜中に何度も起きる・早朝に目覚めて再入眠できない
  • 朝起きるのが30分以上遅くなる日が3日以上続く
  • 睡眠時間が6時間を切る日が週3日以上ある

食欲面
  • 好物が出ても箸が進まない日が増える/食事中に黙る時間が長くなる
  • 逆に間食・ジュース・ファストフードの量が急に増える
  • 体重が1ヶ月で3kg以上変動する

体調面
  • 「お腹が痛い」「頭が痛い」と訴える日が増える
  • 風邪を引きやすくなる・治りにくくなる/立ちくらみ・めまい
  • 肌荒れ・口内炎が続く/動悸・息苦しさを感じる場面が増える

行動面
  • 部屋に閉じこもる時間が増える・家族との会話が減る
  • スマホの時間が普段の2倍に増える・逆に極端に減る/イライラ・八つ当たりが増える
  • 「もうやめたい」と口にする/涙が出やすくなる・無表情になる

3段階基準表(軽症・中等症・重症)

4面のうち、いくつに変化が出ているかで段階を判別します。家庭で状態を共有するときも、この表で説明すると伝わりやすいです。

段階SOSサイン出現面推奨対応所要時間目安
軽症1〜2面に変化3〜7日の意図的休養+学習計画見直し1〜2週間で回復
中等症2〜3面に変化+2週間以上継続環境調整+予備校・塾・カウンセラーへの相談2〜4週間で回復
重症3〜4面に変化+強い苦痛または希死念慮医療機関(小児科・心療内科)への相談を視野4週間以上・専門相談

ここで最も気をつけたいのは、「重症」のラインを見落とさないことです。とくに「希死念慮(消えてしまいたい・いなくなりたい)」が口に出るレベルになった場合は、受験継続の判断より前に、医療相談と公的窓口接続を最優先で動かしてください。

重症レベルで使うべき公的窓口

厚生労働省は「まもろうよこころ」サイトで、相談窓口を24時間体制で案内しています。緊急性が高いケースで使われる主な窓口は次の通りです(厚生労働省「まもろうよこころ」電話相談窓口 2026年6月閲覧)。

  • 文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」0120-0-78310(フリーダイヤル・24時間・年中無休・通話料無料)
  • 厚生労働省「こころの健康相談統一ダイヤル」0570-064-556(最寄りの公的相談機関に接続)
  • よりそいホットライン 0120-279-338(24時間・年中無休・無料)
  • 各地域のいのちの電話窓口

文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」は、いじめだけでなく子どもに関するSOS全般について、子ども本人・保護者ともに夜間・休日を含めて24時間相談できる全国共通ダイヤルです(文部科学省「24時間子供SOSダイヤルについて」 2026年6月閲覧)。「受験のつらさはいじめではない」とためらう人がいますが、受験ストレスでの相談も対象範囲です。

3類型ごとの対処手順と回復目安

「やめたい3類型」と「3段階基準」を組み合わせて、対処手順を整理します。本セクションが本記事の実用核です。指導現場で実際に機能してきた手順をそのまま示します。

類型1. 燃え尽き型の対処手順(3日〜1週間で大半が回復)

  1. 学習を完全停止する3〜7日
  2. 身体の回復を最優先する
  3. 学習再開は「以前の50%」から
  4. 「燃え尽きパターン」を分析する

Step 1. 学習を完全停止する3〜7日

中途半端に「半日だけ休む」では燃え尽きは戻りません。最低3日・できれば1週間の完全停止が効きます。問題集・参考書・学習アプリは全部閉じ、塾も休みます。

Step 2. 身体の回復を最優先する

1日8〜9時間の睡眠を3日以上連続でとる/3食しっかり食べる(食べたいものを優先)/外に出て30分ほど散歩する/入浴を湯船に変える/就寝前1時間はスマホを控える。身体が戻ると、心は後から追いついてきます。

Step 3. 学習再開は「以前の50%」から

いきなり以前の量に戻すと再発します。最初の3日は通常の50%、次の3日で70%、その次の3日で100%へ。段階的に戻すのがポイントです。

Step 4. 「燃え尽きパターン」を分析する

回復したら、何が原因で燃え尽きたかを書き出します。模試前の詰め込みか、夏期講習の連続か、睡眠不足か。原因を特定しないと、3ヶ月後に再発します。

類型2. 自信喪失型の対処手順(2〜4週間で学習方法を再設計)

  1. 模試判定を「いったん見ない」期間を作る
  2. 学習計画を「現状から」組み直す
  3. 「目標の再分解」で1ヶ月単位の小目標に置き換える
  4. 「比較対象」を半径30cmに絞る

Step 1. 模試判定を「いったん見ない」期間を作る

自信喪失型の引き金は、多くの場合、模試判定の累積です。「次の模試までの2週間、判定を封筒に入れて見ない」が有効。判定に耐性をつけてから、戦略を立て直します。

Step 2. 学習計画を「現状から」組み直す

正答率3割で過去問の解説が理解できないのは当然――という前提に立ち直します。教科書レベル(中学範囲含む)の総点検→基礎問題集→標準問題集の周回→標準+応用→過去問(最初は10年前から)の順で組み直す。「いきなり過去問」「いきなり志望校レベル」が典型的な引き金です。

Step 3. 「目標の再分解」で1ヶ月単位の小目標に

「東大合格」のような遠い目標は、つらいときには逆効果。代わりに「今月、文法問題集を1周」「数学の基礎を毎日10問」のような、1ヶ月単位・達成可能な小目標に分解します。これを3回連続で達成できると、自信喪失から回復に向かうことが多い。

Step 4. 「比較対象」を半径30cmに絞る

SNS・友人グループで他人の成績を見続けると、自信喪失は深まります。比較対象を「先週の自分」「先月の自分」に限定する。これだけで回復が早まります。

ここで「比較を断つ」発想は、勉強の合間の遊び・息抜きへの罪悪感の処理とも地続きです。休むことと怠けることの線引きに迷う場合は、受験生が遊ぶことへの罪悪感とメンタルの整え方もあわせて参考にしてください。

類型3. 動機喪失型の対処手順(1〜3ヶ月の進路棚卸し)

  1. 学習を1〜2週間意図的に停止する
  2. 「進路の棚卸し」を紙に書き出す
  3. 進路選択肢を3つ書き出して比較する
  4. 第三者と再確認・場合によっては進路転換も視野

Step 1. 学習を1〜2週間意図的に停止する

動機喪失型は「身体の問題」ではないため、休んでも回復しません。「学習しない時間に、何をしたいかを見る」フェーズに入ります。1〜2週間は意図的に勉強を止め、自分の関心がどこに向くかを見ます。

Step 2. 「進路の棚卸し」を紙に書き出す

次の問いを1問ずつ、紙に書き出します(PC・スマホは使わない)。高校1年のとき何に時間を使っていたか/楽しかった授業・嫌いだった授業/「これで生活していきたい」と思える分野は何か/「親に勧められた」進路と本当に選びたい進路にズレはないか/大学以外(専門学校・就職・留学・ギャップイヤー)も視野に入れるなら、どれが現実的か。手で書くと、頭が整理されます。

Step 3. 進路選択肢を3つ書き出して比較する

棚卸しをもとに、「行ける」ではなく「行きたい」進路を3つ書き出します。比較軸は ①やってみたいことに近いか ②卒業後のイメージが持てるか ③家計・期間として無理がないか ④自分のペース・適性に合うか ⑤5年後・10年後に後悔しないか、の5つ。軸を決めると、感情でなく構造で選べます。

Step 4. 第三者と再確認・場合によっては進路転換も視野

学校の進路担当、予備校・塾のスタッフ、保護者など、信頼できる第三者と話す場を作ります。進路転換は「逃げ」ではなく「再設計」であることが多い。受験継続が無理なら、無理に続けないという選択肢も視野に入れて構いません。

「やめたい」を口にする時期別の対処方針

「やめたい」が出る時期によって、対応の優先順位が変わります。高3〜浪人の典型的な発症時期を整理します。

高3夏(7〜8月)の「やめたい」

夏は学習量が急増し、燃え尽き型が最も多発する時期です。夏期講習を毎日6〜8時間受講して疲弊/暑さと学習量の重なりで体調を崩す/7月末〜8月の模試で判定が伸びず自信喪失と燃え尽きが重なる――が典型です。この時期の優先対応は、燃え尽き型を疑い、3〜7日の完全休養を最初に試すこと。夏に燃え尽きを放置すると、秋以降の伸びが止まります。

高3秋(9〜11月)の「やめたい」

秋は模試判定が累積する時期で、自信喪失型が多発します。9〜11月の模試でD・E判定が3回連続で出ると、自信喪失は重症化しやすい。この時期の優先対応は、模試判定をいったん封印して学習計画を組み直すこと。秋に学習方法を再設計できた人は、冬〜直前期に伸びを取り戻すことが多い一方、放置すると共通テスト直前で完全停止することがあります。

高3冬(12〜1月)の「やめたい」

共通テスト直前期は、燃え尽きと自信喪失が複合的に出やすい時期です。追い込みで睡眠が削られ燃え尽きが急増します。この時期の優先対応は、完全休養ではなく「ペースを保ったまま量を3割減」。直前期に1週間完全停止するとペースが崩れて戻りにくいため、1日の学習時間を8割→5割に減らし、睡眠と食事の優先順位を戻します。

直前期〜2月私大入試期の「やめたい」

私大入試の連続受験中に出る「やめたい」は、多くの場合、本番のストレスと体力消耗の混合反応です。この時期の優先対応は、受験スケジュールを再点検して「受けすぎ」を間引くこと。7校受験予定でも、3校終了時点で燃え尽きが見えたら、後半を1〜2校間引く選択肢も視野に入れます。受験料より、本番のパフォーマンス低下のほうが損失は大きい

浪人生の「やめたい」(6月・11月・1月に多発)

浪人生は時期別の発症パターンが特徴的です。6月:新生活の高揚が冷め、孤独感・閉塞感がピーク(動機喪失型が多い)/11月:成績の伸び鈍化で現役時代の挫折を思い出す(自信喪失型が多い)/1月:共通テスト直前の重圧で再び燃え尽きる(燃え尽き型が再発)。浪人生は同世代がすでに大学生活を始めており、SNS経由の比較で動揺しやすいため、比較対象を半径30cm(先週の自分)に絞ることが現役以上に重要です。

宅浪(自宅浪人)を選ぶ場合は孤独感が動機喪失の引き金になりやすく、向き不向きの見極めも欠かせません。自宅浪人のメリット・デメリットと向いている人の境界線、浪人決定直後の動き方は浪人決定後の最初の1ヶ月でやるべきこともあわせて確認してください。

大学入試センターの公表によれば、2026年度共通テストの既卒(浪人含む)志願者は全志願者の14.4%・前年比+6,336人で、浪人を選ぶ層の総数自体は増えています(大学入試センター「志願者数推移」 2026年6月閲覧)。文部科学省「学校基本調査 令和7年度速報」では大学・短大進学率は58.64%・10年連続で過去最高ですが、難関校への集中は緩んでおらず「行きたい大学に受かる」ハードルは依然として高い水準にあります(文部科学省「学校基本調査」 2026年6月閲覧)。

家庭→予備校→公的窓口→医療機関の4階層相談フロー

「やめたい」のレベルに応じて、どこに相談するかを4階層で整理します。家庭でも、この順序で考えると動きやすいです。

  1. 家庭内対話(即決させない・即否定しない・即励まさない)
  2. 予備校・塾・学校への相談
  3. 公的相談窓口(無料・匿名)
  4. 医療機関(早期相談の選択肢)

第1階層:家庭内対話(即決させない・即否定しない・即励まさない)

最初の相談先は家庭です。「やめたい」と言われたとき、落ち着いて対応できている家庭に共通するのは次の3点です。

  • 「そう感じているんだね」とまず受け止める(否定しない・解決を急がない)
  • 「いつから?」「何がきっかけ?」と時系列で確認する
  • 「今日明日決めなくていい・1週間考えよう」と時間を与える

「即決させない」「即否定しない」「即励まさない」の3原則が、初動の質を決めます。

第2階層:予備校・塾・学校への相談

家庭で受け止めたら、次は学習指導の専門家に相談します。予備校・塾の保護者面談(保護者単独でも可)/学校の担任・進路担当教員/スクールカウンセラーの3経路です。これらの第三者は「やめたい」が3類型のどれに当てはまるか、現場感覚で見立てができます。「学習量過多が原因と判明し、夏期講習を1コマ減らして回復」といった対応がよく見られます。

第3階層:公的相談窓口(無料・匿名・本人同意なく親に通知されない)

家庭・予備校・学校で対応しきれない、または家庭内で話せない場合は、公的窓口を使います。

文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」

  • 電話:0120-0-78310(フリーダイヤル)/受付:24時間・年中無休
  • 対象:子ども本人・保護者/内容:いじめ・受験のつらさ・進路・家族関係などSOS全般

厚生労働省「こころの健康相談統一ダイヤル」

  • 電話:0570-064-556/最寄りの公的相談機関に自動接続

よりそいホットライン

  • 電話:0120-279-338/受付:24時間・年中無休・無料

自治体のスクールカウンセラー・教育相談室

  • 各自治体の教育委員会が運営し、学校とは独立した立場で相談できる

公的窓口は無料で、原則として記録は本人の同意なく第三者に開示されません。「相談すると親や学校に伝わる」と心配する人がいますが、緊急性が高くないケースで、本人の同意なく第三者通知されることは原則ありません

第4階層:医療機関(「大ごと」ではなく早期相談の選択肢)

3段階基準の「重症」レベル(SOSサイン3〜4面・希死念慮を伴う)に達した場合は、医療機関への相談を視野に入れます。小児科(中高生も対象)/心療内科・精神科/大学病院の児童精神科/かかりつけ医の紹介状経由の4ルートが現実的です。

ここで大切なのは、「医療機関に相談する=大ごと」ではないという認識を家庭で共有しておくこと。風邪で内科に行くのと同じく、メンタルの不調も早期に専門家に相談するほうが回復が早い。とくに2週間以上、複数面で変化が続く場合は、医療相談のハードルを下げて構いません。

保護者向け:子どもが「やめたい」と言ってきたときの初動

保護者面談で繰り返し聞かれるのが「子どもがやめたいと言ってきた・どうしたらいいか」です。初動を整理します。

初動でやってはいけない3つ(NG)

  • NG1. 即否定:「何を弱気なこと言ってるの」「いまさら無理」。子どもは「親に言ってもダメだ」と感じ、次から相談しなくなります。
  • NG2. 即励まし:「お前ならできる」「あと少しだから頑張れ」。子どもは「自分のつらさが伝わっていない」と感じます。
  • NG3. 即決定:「じゃあ志望校を下げよう」「今すぐ予備校を変えよう」。保護者が先に動くと、本人が意思決定の主体から外れてしまいます。

初動でやるべき3つ(OK)

  • OK1. まず受け止める:「そう感じているんだね」「いつからつらかった?」と、感情を否定せず時系列で確認する。受け止められた子ほど、その後の対話が建設的になります。
  • OK2. 時間を与える:「今日明日決めなくていい・1週間考えよう」と明示する。即答しないことで、本人が落ち着いて思考できる場を作ります。
  • OK3. 第三者の場を準備する:家庭内だけで決めず、予備校・塾の面談、学校の進路相談、公的窓口やカウンセラーを視野に。「外の目」で家庭の中の感情の渦を一度外に出せます。

保護者自身のメンタルケアも忘れない

子どもの「やめたい」発言は、保護者自身にも大きな衝撃を与えます。保護者が不安を一人で抱え込むと、それが子どもに伝染することは少なくありません。配偶者・パートナー、教育系の電話相談、予備校・塾の面談、同年代の子を持つ親同士の対話などで「家の外で処理する回路」を持ってください。親の関わり方の全体像は、保護者の大学受験サポート・親の関わり方も参照してください。

「やめたい」から「続けたい」への切り替え3ステップ

「やめたい」が一時的な感情で、本人がやはり受験を続けたいと感じた場合の、切り替え3ステップを整理します。

  1. 「やめたい」の理由を3類型に振り分ける
  2. 類型ごとの対処手順を1〜4週間実行する
  3. 学習再開後の最初の3週間は「以前の70%」を上限にする

Step 1. 「やめたい」の理由を3類型に振り分ける

本記事の「やめたい3類型」(燃え尽き型・自信喪失型・動機喪失型)のどれに当てはまるかを振り分けます。複数該当なら「燃え尽き優先」で対処を組みます。

Step 2. 類型ごとの対処手順を1〜4週間実行する

各類型の手順を1〜4週間実行します。途中で「効いていない」と感じたら、第三者(予備校・学校・公的窓口)に相談して見立てを再点検します。

Step 3. 学習再開後の最初の3週間は「以前の70%」を上限に

回復しても、いきなり以前の量に戻すと再発します。最初の3週間は意図的に「以前の70%まで」を上限にし、身体と心が完全に戻ったか確認。3週間維持できたら、100%に戻して構いません。

JASSO(日本学生支援機構)「令和4年度 学生生活調査」では、大学・短大・専門学校の学生生活費(学費+生活費)は年間で平均約182万円、最大規模の私立大学では年間220万円超に達するとされており、進路転換の判断は家計と本人の意思の両方を見ながら段階的に行う必要があります(JASSO「令和4年度 学生生活調査」 2026年6月閲覧)。

よくある質問(FAQ)

Q1:「やめたい」と感じた瞬間、すぐに勉強を完全停止していいですか?

燃え尽き型と疑われる場合は、すぐに完全停止して構いません。逆に自信喪失型・動機喪失型は、停止より「学習方法の見直し」「進路の棚卸し」が優先されます。3類型のどれに当てはまるかを振り分けてから判断してください。ただし、こころのSOSサイン4面のうち2つ以上に変化が出ている場合は、類型を問わず一度学習を停止して身体の回復を最優先します。

Q2:親に「やめたい」と言えません。どうすればいいですか?

第3階層の公的窓口(文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」0120-0-78310、よりそいホットライン 0120-279-338)は、親に内緒で利用できます。24時間・無料・匿名で相談でき、内容が本人の同意なく親や学校に伝わることは原則ありません。スクールカウンセラーも本人の希望を尊重します。「親に伝えないでほしい」と最初に伝えれば、原則として尊重されます。

Q3:模試判定がE判定で「やめたい」と感じます。志望校を変えるべきですか?

目安は「夏のE判定は普通・秋のE判定で見直し・冬のE判定で再設計」という時間軸です。夏の段階で志望校を変えるのは早すぎる場合が多く、秋の模試結果を見て本人と進路担当の第三者を交えて再判断するのが現実的です。E判定が3回連続で続き、かつ自信喪失型の症状(食欲・睡眠の変化)が出ている場合は、志望校変更より「学習方法の根本見直し」が先になります。

Q4:「やめたい」と思う自分は甘えているのでしょうか?

「やめたい」と感じることそのものは、甘えとは違います。ほとんどの受験生が一度は感じる正常な反応です。問題は「やめたい」を一人で抱え込み続けることであって、感じること自体ではありません。「やめたい」を口に出せた時点で、回復の第一歩は踏み出せています。3類型に振り分け、対処手順を実行してみてください。

Q5:浪人を続けるのがつらいです。やめて就職した方がいいですか?

これは動機喪失型の典型的な問いです。類型3の「進路の棚卸し」5問を紙に書き出してみてください。書き出した結果が「受験継続より就職・専門学校・ギャップイヤーのほうが自分に合う」と感じるなら、それは逃げではなく進路の再設計です。ただし、浪人2〜3ヶ月目の動機喪失は燃え尽きと混在していることが多く、1〜2週間休んで、それでも進路転換したい気持ちが残るか見ていくのが安全です。

Q6:親に「やめるのは認めない」と言われています。どうすればいいですか?

家庭内で対話が成立しない場合、第三者(学校・予備校・公的窓口)の介在が有効です。文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」0120-0-78310スクールカウンセラーを通じて、家族とは別の専門家の意見を入れることで、家庭内の対話が動き出すことがあります。保護者面談に第三者が同席することで、親子だけでは膠着していた議論が動くケースもあります。

Q7:「やめたい」と医療機関に相談すべきタイミングは?

こころのSOSサイン4面のうち3面以上に変化が出て、それが2週間以上続く場合は、医療相談の目安です。とくに「消えてしまいたい」と口にする/自傷行為がある/食事をほとんどとれない日が1週間以上続く/不眠が2週間以上続く/学校・予備校に行けない日が2週間以上続く、のいずれかが該当する場合は、早めの相談をおすすめします。医療機関への相談は「大ごと」ではなく、回復を早めるための手段です。

Q8:受験を完全にやめた後、後悔しないか心配です。

「やめる」決定そのものより、「やめると決めた後の動き方」が後悔につながるケースのほうが多いです。進路を再選択せずダラダラ過ごすと後悔しやすく、専門学校・就職・留学などの代替進路を即座に動かすと後悔は少ない、という分かれ方をしていました。「やめる」と決めたら、その日のうちに次の進路設計に動くことをおすすめします。受験継続より行きたい道があるなら、それは前進であって後退ではありません。

まとめ:「壁を越える条件」

受験がつらくてやめたいと感じたとき、最初にすべきは「やめたい3類型(燃え尽き型・自信喪失型・動機喪失型)のどれか」に振り分けることです。3類型それぞれに対処手順と回復期間が違い、こころのSOSサイン4面の出現数で軽症・中等症・重症の境界を引けます。家庭→予備校→公的窓口→医療機関の4階層相談フローを地図として、今日の自分・お子さんの状態に当てはめてみてください。

壁を越える3つの条件
  • 条件1:自分の「やめたい」を3類型のどれかに振り分ける(雑多な感情を構造化する)
  • 条件2:軽症・中等症・重症を判別し、対処の階層を間違えない(軽症に医療相談は過剰、重症に「頑張れ」は危険)
  • 条件3:家庭で抱え込まず、第三者(予備校・学校・公的窓口・医療機関)に最低1人は接続する

本記事が拠った情報源

  • 厚生労働省「こころもメンテしよう こころのSOSサインに気づく」(mhlw.go.jp 2026年6月閲覧)
  • 厚生労働省「まもろうよこころ」電話相談窓口(mhlw.go.jp 2026年6月閲覧)
  • 文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」0120-0-78310(mext.go.jp 2026年6月閲覧)
  • 文部科学省「学校基本調査 令和7年度」大学・短大進学率58.64%(mext.go.jp 2026年6月閲覧)
  • 大学入試センター「志願者数推移」既卒14.4%・前年比+6,336人(dnc.ac.jp 2026年6月閲覧)
  • 独立行政法人 日本学生支援機構(JASSO)「令和4年度 学生生活調査」(jasso.go.jp 2026年6月閲覧)

あわせて読みたい

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

大手進学塾で8年、小学生から高校生まで、延べ500人以上に数学と英語を教えてきたYamadaです。授業でよく聞かれたのが「家でどう勉強すればいいですか」でした。週に1、2回の授業では問題演習に追われて、家庭学習の進め方まで手が回りません。そこに歯がゆさを感じてきました。

同じ問題集を渡しても、伸びる子と伸び悩む子がいます。差は頭の良さではなく、目標の立て方と続け方の工夫にありました。保護者面談で「うちの子、やる気が続かなくて」と相談されるたび、もっと多くの家庭に届く形で伝えたいと思ってきました。このサイトでは、受験対策や定期テスト、勉強習慣の作り方を、現場で試してきた方法をもとに書いています。

目次